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トピックス&お知らせ詳細

外務省「海外における日本語の普及促進に関する有識者懇談会」の「議論の総括と政策提言」について


平成25年8月8日

 

 日本語教育機関 各位

 

 外務省に設置された「海外における日本語の普及促進に関する有識者懇談会」は,去る7月31日,外務大臣に「議論の総括と政策提言」を提出しました。
 以下に,外務省ホームページに掲載された提出の発表文,「議論の総括と政策提言」の全文(PDF),及び本文中「4 具体的施策提言」の部分を掲載いたします。

 

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<発表文>

海外における日本語の普及促進に関する有識者懇談会「議論の総括と政策提言」の提出

  

平成25年7月31日


1. 本31日午前,「海外における日本語の普及促進に関する有識者懇談会」の木村孟座長(元東京工業大学学長)は,岸田文雄外務大臣に『議論の総括と政策提言』を提出しました(若林健太外務大臣政務官同席)。

 
2. 同提言では,海外の日本語の普及の現状について,いかに日本語学習者を増やしていくかとの観点からの需要の側面と,いかに日本語学習者を支援するかという学習環境の整備といった供給の両面から分析し,主に以下の課題を指摘した上で,具体的な施策を提言しています。
 (1) 需要面での課題としては,日本の魅力の発信を強化すること等を通じ新たな日本語学習者を発掘する一方,日本への留学や日系企業等への就職を含め日本語を学習するメリットを明確にし,継続的な日本語学習を促す必要性等
 (2) 供給面での課題としては,日本語教師等の人材不足と学習教材の不足,日本語教育のIT化を推進することの必要性等
 (3) 海外永住日本人子弟等に対する「継承日本語教育」への取り組みの必要性


3. 木村座長からは本提言の提出にあたり,今回,岸田大臣のリーダーシップにより,各分野の専門家,民間企業の代表及び関係省庁の代表が集まって,海外における日本語普及という重要な問題について議論し,政策提言する場を設けていただいたことは画期的であり,感謝すると述べ,これらの課題と施策は,関係省庁・機関が連携し,民間企業等の協力も得ながら,「オール・ジャパン」として取り組まなければ十分な効果は望めないので,岸田大臣のお力添えにより,政府全体として有効な手立てが講じられるようにお願いしたい旨述べました。

 

これに対して,岸田大臣からは,政策提言を取りまとめた懇談会の努力に謝意を表しつつ,提言をしっかりと受け止め,まずは外務省と国際交流基金が協力してできることは着手させ,その上で民間部門とも連携を図りながら,文字通り「オール・ジャパン」で取り組むことができるようにしていきたい旨述べました。 続いて,本懇談会に継続的に出席してきた若林政務官から,毎回活発な議論がなされ,その成果として大変有意義な報告書が提出されたことを担当の政務官として嬉しく思う旨述べました。

 

(参考)「海外における日本語の普及促進に関する有識者懇談会」メンバー
 座長
   木村  孟   元東京工業大学学長
 委員(あいうえお順)
   内永 ゆか子  ベネッセ・ホールディングス取締役副社長兼
           ベルリッツ・コーポレーション代表取締役会長兼社長兼CEO
   岡田 常之   住友商事株式会社人事部長
   尾﨑 明人   名古屋外国語大学外国語学部日本語学科教授
   ロバート・キャンベル 東京大学教授
   迫田 久美子  国立国語研究所日本語教育研究・情報センター長
   佐藤 次郎   財団法人日本語教育振興協会理事長
   嶋田 和子   一般社団法人アクラス日本語教育研究所代表理事
   天日 隆彦   読売新聞東京本社論説委員
   春原 憲一郎  財団法人海外産業人材育成協会理事

 

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 この「議論の総括と政策提言」全文  PDF

 

 なお,本文中「4 具体的施策提言」の部分を次に掲載します。


4 具体的施策提言

 上記の海外における日本語教育の現状及び課題を踏まえ,政府として取り組むべき施策について,(1)需要及び(2)供給の観点,並びにそれぞれについて施策の実施について早急に実施すべき,ないし早期に実施可能なものと,中長期的(概ね今後3年以降)に実施を検討すべきものに整理してまとめた。なお,日本語教育におけるIT化の推進は,需要,供給両方の観点で活用できる施策であるので,(3)として独立した形でまとめた。
 なお,これらの施策を実施していく上で,関係省庁・機関はいうまでもなく,独自のノウハウを有する民間企業のCSR活動や民間ベースの日本語教育機関と連携して,限られた資源を効果的・効率的に活用するオールジャパンでの取り組みを追求していくことが重要である。


(1)日本語学習への需要喚起のための施策


【早急に対応すべき,ないし早期に実施可能な施策】


ア オールジャパンで,魅力的な日本語の発掘・発信を含め,日本の「魅力」の発信をより戦略的・効果的に行っていく。その際,特に若年層を中心に人気の高い漫画,アニメ,ファッション等のポップカルチャーや和食などの活用に留意する。


イ 特に,年少時からの対日関心醸成のため,在外公館を中心に初等・中等教育における教育広報を積極的に展開する。


ウ 日本語習得による成功例・モデルについての情報提供を積極的に行う。日本語学習の成功体験についての語り部となる学習経験者を,例えば「日本語普及大使」に任命し,小中学校等で講演や特別事業を行ってもらう。


エ 日本の「魅力」の発信を効果的に行うとの観点から,その発信源たる日本研究者を養成し,日本研究者ないし日本研究機関に対し,日本研究継続のための支援を行う。


オ 日本語学習者の学習へのインセンティブを高める観点から,特に,中等教育課程における日本語学習者の訪日招へいを拡充する。
  外国人学生と日本人学生との交流機会拡大のため,学事暦の弾力化や休業期間を活用したサマープログラムの実施など,日本人学生の外国渡航を促す仕組みが検討されるべきである。また,文部科学省が進めるASEAN諸国等との大学間交流形成支援事業におけるSENDプログラム 6  と国際交流基金の日本語事業との連携強化を図る。


カ 民間企業等の求める日本語人材情報と海外の教育機関が育成している人材情報のマッチングを高める仕組みを検討する。例えば,日本語のキャリアパスについての広報促進の観点から,企業による日本語人材を主たる対象とする就職説明会を実施する。


キ 中等教育における日本語クラスの縮小ないし廃止の恐れがある事案に対し,在外公館等が地方政府当局者,学校関係者等への働きかけや説明会を実施する。


ク 中等教育機関における日本語導入決定権者(学校長,教育行政関係者)の意識不足改善,日本語教育のモチベーション向上のための訪日招聘事業を拡大実施する。


【中長期的な施策】


ア JET採用にあたり日本語能力試験合格者など,日本語能力を有している者を選抜の際に優遇する措置を対外的に見える形で行うことを検討する。


イ 現在の「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度」による日本語学習者の優遇措置をさらに進めることが出来ないか検討する。


(2)日本語教育を供給面から充実させるための施策


【早急に対応すべき,ないし早期に実施可能な施策】


ア 中・高等教育機関において存続の危機に瀕している日本語講座への緊急財政支援,ないし,国際交流基金の海外日本語教育機関に対する助成制度の弾力的運用を検討する。


イ 国際交流基金の実施する日本語専門家の長期派遣について,その効率化及び拡大を図るとともに,短期派遣の活用等の機動的対応により,現地の日本語教員の育成や中核機関の体制整備の支援を拡充する。


ウ 現地教師の能力向上を目的とする訪日研修等を拡大する。特に,教員養成やその他の日本語人材供給を中核的に担う海外の大学等の日本語部門教員に対する修士・博士号取得を支援する。


エ 教育機関が日本語教師の雇用を容易にするため,日本語教師に関するデータバンクを作成し活用する。


オ 日本語教師の質向上のため,現地合同連絡会・合同研修会をより頻繁に開催する。


カ 日本語教師の量的・質的拡大・向上のため,国際交流基金のネイティブ教員雇用支援事業を拡大する。また,海外の日本語学習者と日本語母語話者との接点を拡大するとの観点から,日本語専攻ないし副専攻の日本人大学生の海外派遣を進める。


キ 現地の日本語教師の資質や教育の質を高めるため,教師が活用できる教材の提供や制作支援を行う。その際,現地の行政機関や教育機関と連携・共同して教科書などの教材開発にあたっている国際交流基金のノウハウを活かし,日本語教材の質の充実を図る。また,関係省庁,国際交流基金,民間日本語学校,企業などが協力・連携して,総合的な情報収集-共有を行い,その情報を各方面に提供する。


ク 企業のCSR活動による日本語教育事業に対し,国際交流基金による教師研修支援や教材作成アドバイスなど支援活動を行う。


ケ 引き続き国際協力機構(JICA)が行う日系人アイデンティティ教育事業と国際交流基金が行う日系人に対する日本語教育事業の連携を図る。


【中長期的な施策】


ア 日本語学習者のモチベーションの維持と日本語能力の継続的な向上を保証するため,JF日本語教育スタンダード等を活用し,中等教育から高等教育へのカリキュラム等の連携を図り,より効率よく日本語を学習できる環境を整備する。


イ 学習者が明確に目標を設定し,目標到達を学習のインセンティブにできるよう,JF日本語教育スタンダードと日本語能力試験の関連性を深めるとともに,同スタンダードに基づく熟達度と日本語能力試験の認定レベルとの関係についてわかりやすく解説する。


ウ 進出日系企業や現地の病院・介護施設,民間日本語学校と連携し,日本語教室の整備(ソフト面,ハード面)など日本語学習機会の多様化を推進する。


エ 日本語専門家派遣事業等と日本の民間日本語教育機関等との連携を促進し,日本全体としての日本人日本語教師派遣のための効果的な制度構築を行う。


オ 日本人日本語教師の地位向上,待遇改善のため,日本の民間日本語教育機関の制度上の位置付けを明確にするよう検討する。また,安定的な運営を可能にするための対策を検討する。


カ 海外の日本人子弟のための在外教育施設などを,外国における日本人に対する日本語教育,すなわち国語教育,継承日本語教育,外国人に対する日本語教育の総合機関と位置づけ,そのための体制整備を進める。


(3)需要供給両面の共通課題としての日本語教育におけるIT化の推進


ア JF日本語教育スタンダードの考え方に基づき,海外の学習者や潜在的学習者が初級段階から日本語を使う楽しさを実感できるような国際交流基金によるeラーニング講座等を開設する。


イ 公的機関,大学,民間日本語教育機関,企業等がそれぞれの得意分野を生かす形で以下の事業を検討・推進する。
 ・日本語教師研修のIT化(例えばテレビ会議システムやスカイプの導入など)を図る。
 ・日本語学習者に日本語を話す機会を提供する日本語チャットサイトの立ち上げなど,インターネットを活用した日本語学習機会を提供する。
 ・日本語教師のスキルアップや教育機関での使用及び,来日後の生活に密着した日本語学習を目的にした簡便に利用できるIT教材等を開発する。
 ・漫画,アニメ等のポップカルチャーや和食を取り入れた日本語学習IT教材の開発を更に進める。


ウ 関係機関等が連携して日本語のIT教材や学習に係る情報を収集,総合的に管理することにより,情報の共有とアクセスの利便性を高める。


エ IT化の推進にあたっては,政府の文化無償等の活用により,ハード面での整備も併せ進める。


オ 日本語学習者のアクセスを容易とし,かつ,現行の「読む・聞く」の受容能力に加え,「話す・書く」の産出能力の測定を目指す日本語能力試験開発,コンピューターベース化を進めるべく導入可能性に関する調査を早急に行う。


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6 SEND(Student Exchange- Nippon Discovery )プログラム
 海外の大学に留学する日本人学生が,現地の学校等での日本語指導支援や日本文化の紹介活動を行うもの。


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 同懇談会の開催概要及び詳細は,次のURLを参照してください。
  ○第1回(3月26日)
     開催概要 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page5_000059.html
     詳  細 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000007321.pdf
  ○第2回(4月18日)
     開催概要 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page5_000091.html
     詳  細 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000007322.pdf
  ○第3回(5月14日)
     開催概要 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page22_000029.html
  ○第4回(6月17日)
     開催概要 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page5_000197.html
  ○第5回(7月 5日)
     開催概要 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page5_000205.html

 

この懇談会に,当協会の佐藤理事長が委員として参画しております。



〔問い合わせ先〕
総務部 上戸敏信  Eメール:kamito@nisshinkyo.org
TEL:03-5304-7815 / FAX:03-5304-7813
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